サンクコストにしばられている人は結構多いようです| 国産ウナギが売れ残る異常事態って、どういうこと?

記録的不漁にもかかわらず、国産ウナギが売れないのだそうです。そんなに売れないのなら、「値段を下げればいいのでは」と思うのですが、そう考えない人もいるようです。稚魚であるシラスウナギの値段が高いので、値下げをすると採算割れになるんですって。

でも、売れなくても、結局は採算割れですよね。なら、少しでも売った方が良くない??

土用の丑は鰻だね

今年は国産ウナギが売れないのだそうです。不漁で数が少ないのに、売れ残っているのだとか。

不漁なのに売れない国産ウナギ

今年はウナギが不漁なのに、売れずに余っているという趣旨の記事が、朝日新聞に載っていました。1 なんでも、記録的といえるくらい不漁なのに、「多くのウナギが余る異常事態」なのだそうです。

つまり、出荷されている数が少ないのに、売れていないということですね。

これに関して、宮崎県養鰻漁業協同組合というところは、次のように分析しています。

稚魚の不漁によって値段が高騰した国内産の需要が、値段の安い外国産に移ったためだ、と分析している。

単純な需要と供給の話じゃないの?

さて、このニュース、どこか変だと思いませんか。値段の安い外国産にシェアを取られたのなら、国産ウナギも値段を下げれば良いわけですよね。

売れない原因が値段だというのなら、簡単な話です。売れる値段に下げるだけの事です。経済学の基礎の需要と供給の話ですよね。

Yahoo!ニュースのコメント欄でも、当然そういう反応はありました。「高い値段で売りたいから売れないだけ」という指摘をしている人が少なからずいました。

これに対するコメント欄の反応(賛成・反対など)が興味深かったので、ちょっと見てみましょう。ちなみに、コメントされた内容の趣旨を汲んで、私が書き直しました。そのままだとちょっと大変なので。

仕入れコストが高いので値下げが難しいという反論

反論の大勢を占めたのが、「稚魚(シラスウナギ)の値段が高いので、値下げができない」という主張です。要するに、コストを積み上げていくと、これ以上の値下げは出来ないという考え方です。

この意見、本当に多かったです。

こういう意見の持ち主の多くは、最初の「高い値段で売りたいから売れないだけ」というコメントに対して「頭大丈夫か」「小学生なのかな?」といった辛辣な反応をしていました。

まあ、ガラが悪いのはYahoo!ニュースのコメント欄では珍しいことではありませんけど。

コストの問題は売る側の理屈

コストを積み上げて云々という人たちの、言っていることは分からなくはありません。でも、これって、あくまで売る人の理屈ですよね。

買い手にとっては、稚魚の値段なんて、ウナギを買うかどうかの選択には何の関係もありません。買い手がせいぜい1,000円しか出せないと思えば、稚魚を2,000円で仕入れようが1万円で仕入れようが関係はないのです。そのウナギは、買わないだけです。

しかも、外国産の品質がソコソコになってきて、価格が大幅に安いのなら、外国産に流れるのが自然でしょう。コストがかかると言いはったところで、消費者は「じゃあ、買ってあげよう」とはならないのです。

これまでのコストに引きずられてしまうサンクコスト効果

ちなみに、生産などのコストがかかったから価格を下げられないというような現象は、サンクコストという考え方を使って説明できます。トータルの損益ではなく、すでに使ったコスト(サンクコスト)に頭が言ってしまうのです。

ちなみにサンクコストは英語で書くとsunk cost です。sink という「沈む」という意味の動詞の過去形、過去分詞形ですね。沈んでしまったコストと言う事です。

今回のケースで言うと、もともと仕入れや養殖にかかった費用がサンクコストです。このコストが気になってしまうと、売値を高く設定したくなるわけです。

しかし実際は、サンクコストがいくらであろうと、1円でも回収した方が養殖業者のメリットですよね。ということは、仕入れなどの価格とは関係なく、思い切って安い値段で売ってしまう方が賢いという可能性も考えられます。

もう少し正確に言うと、売値と売れる数を掛けたものが最高になるように値段を付けることになります。

ちなみに、稚魚の値段が高いからという意見は、本当に多かったです。率直に言って、サンクコストに引きずられている人が多いことに、軽い衝撃を覚えました。

そんなの消費者はしらないつーの。

仕入れ値が高いから値下げできないという主張こそ問題

ということで、最初に紹介した、「高い値段で売りたいから売れないだけ」というコメントは、的外れなものではありません。ほしい値段、少なくとも買う気になる値段で売らないと売れないですよね。

むしろ、仕入れ価格が云々と言う方が的外れと言うべきでしょう。だって、仕入れ価格がいくらだろうと、売れなければ売り上げはゼロなのですから。

しかも、記録的に数が少ないのに売れ残っているわけですから、価格設定は完全に間違っているのです。

それでも価格を下げられないと頑張るのなら、勝手に潰れてくださいとしか言いようがありません。数が少ない今年、今の値段で売れないものが、来年になって突然売れるようになる可能性は小さいですからね。

国内業者に義理立てして国産を買う理由は、消費者には全くありません。

ブランド価値云々という意見もあるが

もう一つあった「値下げ案」に対する批判が、ブランド価値を下げないために値下げは出来ないというものです。

この主張も、一見するともっともな感じもします。でも、冷静に考えると、一瞬で論破できてしまう事が分かります。

ウナギの価格は、すでにかなり高騰しています。今更多少の値下げをしたところで、ブランド価値が棄損するとは思えません。

むしろ、まともな価格で庶民が食べられるような努力をしていただけないでしょうか。消費者からすると、今の値段が高すぎるのです。

「ブランド価値がー」という主張に関しては、これで終わりですよね。

単に、外国との競争に負けただけなのでは

さて、もう一度、記事の引用部分に戻ってみましょう。養殖業者は、現在の状況を、次のように分析しています。

稚魚の不漁によって値段が高騰した国内産の需要が、値段の安い外国産に移ったためだ、と分析している。

これって、単純に、外国企業との争いに敗れた結果とも読めますよね。

これまでは、値段の安い外国産には、「安かろうマズかろう」みたいなイメージがありました。その外国産が売れるようになったわけですから、外国産ウナギのイメージが改善してきたとも考えられます。

少なくとも、今までは国産ウナギを仕入れていたような料亭やらホテルやらが、外国産のウナギを仕入れるようになったわけです。これって、どう考えても、外国産のウナギに負けただけですよね。

おそらく、これまでは、シラスウナギの値段が高いからウナギの値段も高くするというやり方が通用したのでしょう。国産ウナギの方が品質的、あるいはイメージの面で優位だったので、それが通用したわけです。

しかし、外国産の品質が改善してきたら、国内業者の言い分が通用しなくなったという事でしょうね。ウナギには外国産もありますし、ウナギ以外にもおいしい食べ物はありますからね。

「シラスウナギが高騰して」と言われても、「それがどうしたの?」と言うしかありません。ウナギが高いなら、違う魚なり肉なりを食べればいいのですから。

この記事だけからでは断定することは出来ませんが、ちょっと国内業者を同情する気は置きづらい気がします。結局、競争に負けただけにしか見えなませんから。


  1. 不漁でも…国産ウナギ余ってる「買い手つかぬ異常事態」
    朝日新聞デジタル 7/12(木) 11:32配信 []

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