厚生年金や健康保険の事業所って何だ?自営業者との関係は?

厚生年金や健康保険というのは、事業所単位で入るのが原則です。それでは、厚生年金や健康保険に入るのは、どんな事業所なのでしょうか。自営業者には関係が有るのでしょうか。

また、そもそも事業所というのは、一体何なのでしょうか。一般の会社とは異なるのでしょうか。

このあたりの確認をしてみましょう。

事業所は会社よりも小さい単位

健康保険や厚生年金で言う事業所というのは、事務所、工場、店舗などを指します。つまり、会社よりもさらに細かい概念です。

例えば、A社の本社ビルがあり、その隣に工場があったとします。この場合、A社の本社と工場は、異なる事業所ということになります。

この事業所で一定の条件を満たす時、健康保険や厚生年金に強制加入することになるわけです。具体的には、常時5人以上従業員を使っているか、法人の事業所の場合は強制適用事業所となります。

健康保険法 第3条第3項
この法律において「適用事業所」とは、次の各号のいずれかに該当する事業所をいう。
一 次に掲げる事業の事業所であって、常時五人以上の従業員を使用するもの
(中略)
二 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの
(後略)

厚生年金保険法 第6条
次の各号のいずれかに該当する事業所若しくは事務所(以下単に「事業所」という。)又は船舶を適用事業所とする。
一 次に掲げる事業の事業所又は事務所であつて、常時五人以上の従業員を使用するもの
(中略)
二 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの
(後略)

これらの条文から分かるように、事業所というのは必ずしも会社組織である必要はありません。個人事業主が経営していている事業所というのもあり得ます。

例えば個人が学習塾やら弁当屋やらを経営している場合、その塾や店舗が事業所となります。個人がフランチャイズのオーナーをやっているコンビニなんかもそうですね。

そこで、常時5人以上を雇っていれば、個人事業主の行っている事業でも健康保険や厚生年金に入らないといけないわけです。

同じ事業主のもとで働いても健康保険に入れないことも

さらに言うと、厚生年金や健康保険の強制加入は事業所ごとに判断されるというのも重要なポイントです。

例えば、Bさんは町工場をやっていて、工場と少し離れたとこりに事務所があったとします。そして、工場で働いている従業員が常時7人で、事務所で働いているのが常時2人だったとしましょう。

この場合、工場は厚生年金や健康保険の強制適用事業所となりますが、事務所はそうでは無いのです。そうなると、工場で働く人は健康保険にも厚生年金にも入りますが、事務所で働く人はそうではないことになってしまいます。

まあ、現実問題としては、これだけの人数を雇っている場合は、会社にするでしょうけどね。それでも、ルール上は、こういうケースも有り得るということです。

複数の事業所を一括適用することが出来る

ここまで説明してきたように、健康保険や厚生年金は事業所単位で加入します。ということは、事業所単位で事務が発生することになります。

さすがにこれは面倒です。特に法人の場合は、1人しか使っていない場合でも事業所になることがあります。そのための事務負担はかなり大きいと言わざるを得ないでしょう。

実はこんな場合、一括適用という方法が使えます。どんな方法かと言うと、複数の事業所を一つの事業所とみなすことが出来るのです。

条文をチェックしてみましょう。

健康保険
第34条第1項
二以上の適用事業所の事業主が同一である場合には、当該事業主は、厚生労働大臣の承認を受けて、当該二以上の事業所を一の適用事業所とすることができる。

厚生年金保険
第8条の2第1項
二以上の適用事業所(船舶を除く。)の事業主が同一である場合には、当該事業主は、厚生労働大臣の承認を受けて、当該二以上の事業所を一の適用事業所とすることができる。

条文から分かるように、何れのケースも、厚生労働大臣の承認が必要です。

事業主やその家族は健康保険や厚生年金に入れるのか

ちなみに法人の場合、事業主(役員)も健康保険や厚生年金に入ることが出来ます。ただ、個人事業としてやっている場合は、どちらにも入ることはできません。

また、事業主の家族も、健康保険や厚生年金に入ることが出来ます。適用事業所で働いて、なおかつ報酬が支払われているという実態があるなどの条件は付きますが。

このあたりは、条文の解釈の問題で、ちょっと微妙な点が有るようです。ただ、現在の運用では、一定の条件を満たせば事業主も家族も健康保険や厚生年金に入れるという理解でいいでしょう。

個人事業主は健康保険や厚生年金に入れない

その一方で、個人事業主の場合は、適用事業所になっても健康保険や厚生年金に入ることはできません。

率直に言って、ちょっと腑に落ちないところでは有るんですけどね。なんだか、差別されているようで。まあ、実際問題としてこうなっているので、仕方がありません。

逆に言うと、事業主が健康保険や厚生年金に入れるというのが、法人化のメリットの一つかもしれません。率直に言って、かなりメリットがありますからね。

個人事業主の事業所が5人未満になったら

上で書いたとおり、仮に法人でなくても、常時5人以上の従業員がいれば、健康保険や厚生年金の適用事業所になります。この規定が適用されて、個人事業主の事業所が健康保険や厚生年金の適用事業所になったとしましょう。

しかし、その後従業員の数が減り、常時使用する従業員が3人になってしまったとします。強制適用事業所の要件を満たさなくなったわけですね。

この場合、健康保険や厚生年金はどうなるのでしょうか。

実はこの場合も、継続して適用事業所となります。正確に書くと、任意適用事業所と呼ばれる適用事業所に、自動的になるのです。

とりあえず条文を見てみましょう。

健康保険の場合

まずは健康保険法第32条。

適用事業所が、第三条第三項各号に該当しなくなったときは、その事業所について前条第一項の認可があったものとみなす。

「前条第一項」というのは、第31条第1項ですね。ここでは、次のように書かれています。

適用事業所以外の事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けて、当該事業所を適用事業所とすることができる。

第31条は任意適用事業所に関する条文です。「前条第一項の認可があったものとみなす」とありますので、適用事業所の従業員の数が減った場合は、自動的に任意適用事業所の認可があったものとみなされるわけです。

厚生年金の場合

厚生年金も、ほぼ同じです。第7条の条文に適用事業所に該当しなくなった場合の扱いが書かれています。

前条第一項第一号又は第二号の適用事業所が、それぞれ当該各号に該当しなくなつたときは、その事業所について同条第三項の認可があつたものとみなす。

そして、第6条第3項というのは、次のような内容です。

第一項の事業所以外の事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けて、当該事業所を適用事業所とすることができる。

これまた、任意適用事業所に関する規定ですね。つまり、厚生年金でも、自動的に任意適用事業所になったと見なされるわけです。

こうしないと従業員が困る

従業員の人数が減ったら、健康保険や厚生年金が使えなくなるのでは、従業員が困ってしまいますよね。また、事務も変わってしまいますから、事業主にも負担です。

ですから、自動的に任意適用事業所にするというふうにするのは、当然と言えば当然と言えるでしょう。

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