個人事業主はなぜ老後資金の備えが必要なのか

個人事業主はサラリーマン以上に老後の備えが必要です。これから個人事業主になろうという方の多くは、既にそういう意識を持っていることと思います。

ただ、人によっては、「個人事業主は老後の備えが必要ない」という人もいます。全く逆のことを言う人がいるわけです。

実際のところ、個人事業主は老後の備えについてどのように考えればいいのでしょうか。あるいはサラリーマンより不利だとしたら、どんな点が不利なのでしょうか。

サラリーマンより2つの点で不利だと考えていい

個人事業主はサラリーマンと比べると、老後資金に関して2つの点で不利だと考えて良いでしょう。一つは老齢年金、もう一つは退職金です。

厚生老齢年金がもらえない

現時の制度だと、65歳になると、私達は公的な老齢年金をもらえます。この老齢年金は2段階に分かれています。老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つです。

サラリーマンの場合、この2つの老齢年金を受け取ることが出来ます。しかし、個人事業主の場合は、老齢基礎年金しかもらえません。片方しかもらえないので、当然ですが、もらえる公的年金の額は少なくなります。

個人事業主が老齢厚生年金をもらえない理由はとてもシンプルです。個人事業主は厚生年金に入ることが出来ません。ですから、厚生年金の保険料を納めることもできないのです。保険料を納めなければ年金ももらえないのは当たり前ですよね。

補足:厳密に言うと個人事業主も厚生老齢年金はもらえます

ちょっと補足をしておきましょう。

厳密に言うと、個人事業主も厚生老齢年金をもらえる可能性はあります。どんなケースかというと、サラリーマンを辞めて個人事業主になったようなケースです。

サラリーマンとして働いていた時期には、当然ですが、給与から厚生年金の保険料が天引きされています。老齢基礎年金を受け取る条件を満たしている人は、1回でも厚生年金の保険料を貰っていれば、65歳になった以降に厚生老齢年金を受け取ることが出来ます。

もちろん、厚生年金の保険料を払った期間が短い人は、年金の額も小さくなります。そうでないと不公平ですからね。ですから、サラリーマンに比べれば、やっぱり受け取れる年金が少なくなるという点は変わりません。

ですから、より正確に書くと、「個人事業主をしていた時期の分の厚生老齢年金はもらえない」という感じになるでしょうか。

この理屈でいくと、会社を辞めるタイミングが遅い方が、老齢厚生年金の給付は大きくなります。逆に若いうちに脱サラをした人だと、ほとんど厚生老齢年金はもらえません。

退職金が受け取れない

個人事業主が老後資金の準備をしないといけないもう一つの理由は、個人事業主には退職金が無いからです。特に最近は、退職金の代わりに企業年金を積立てている企業も多いです。ですから、老後の年金額に如実に差が出る可能性が大きいのです。

もちろん退職金は、すべての企業ででるわけではありません。サラリーマンをやっていても、支払われないケースも多いです。ですから、個人事業主だけが不利というわけではないのですけどね。

ただ、退職金が出る企業のサラリーマンと比べると、自分で準備が必要なのは明らかです。

ちなみに、小規模企業共済という、個人事業主が自分のために積立てる退職金の仕組みもあります。個人事業主が退職金的なものが欲しいと考えるのなら、こういう制度を利用しても良いでしょう。

個人事業主は老後の準備が要らない?

ところで、最初に書いたように、「個人事業主は老後の準備が要らない」と主張する人もいます。こういう人は、どんな理屈があるのでしょうか。

どうやら、彼らの考え方としては、「個人事業主は一生働けるから老後の準備が要らない」ということのようです。あるいは「子供が事業を引き継いで養ってくれるから老後の準備が要らない」という人もいます。

一生働けるから云々というのは、一部の業種ではもしかしたら正しいのかもしれません。例えば、個人病院をやっている医師の中には、かなり高齢なのに働いている人もいます。そんなケースを想定しているのでしょう。

でも多くの業種では、こんなのは成り立たない話ですよね。それに、病気で働けなくなるというケースだってありえます。

後者の方は、古きよき時代のビジネスモデルという感じがします。親が営んでいた八百屋なり洋食屋なりを息子が引き継ぐようなイメージでしょうか。でも、こんなケースも現在ではそれほど多くないでしょう。

ということで、個人事業主は老後の準備が要らないという考え方は、かなり眉唾だと思って良さそうです。

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