マーケティングの用語にプロダクト・ライフサイクル(あるいは、製品ライフサイクル)という言葉があります。このプロダクト・ライフサイクルと言う考え方は、商売をする上でぜひ身に付けておきたい知識です。あるいは、自分でビジネスをしている人でなくても、経済ニュースを読むときに非常に参考になることがあります。
このページでは、最近のニュースも交えて、プロダクト・ライフサイクルについてみてみましょう。
Contents
新しい製品の一生
プロダクト・ライフサイクルというのは、その名前から分かるように、ある製品が生まれてから消えていくまでのサイクルです。必ず同じような経路をとるわけではありませんが、代表的なパターンが存在するのです。
まず、まったく新しい商品が発売されると、最初はなかなか売れないものですよね。しかし、本当に優れたものなら、徐々に売り上げをのばしていきます。この徐々に売れ始める時期を導入期と言います。
やがて市場に製品が受け入れられます。販売個数が毎年右肩上がりで増えていきます。この時期を成長期と言います。
ただ、そんな商品も、ずっと売れ続けるわけではありません。あるていど市場に出回ったタイミングで、販売数の伸びは落ちて行き、売り上げとしては横ばいに近づいていきます。この時期を成熟期と言います。
その後は完全に売り上げが横ばいになり、最終的には徐々に売り上げは減り始めます。この時期を衰退期と言います。
こういった一連の流れが、プロダクト・ライフサイクルと言うものです。
ちなみに、グラフとしては、次のようなグラフになります。
常にこのグラフどおりになるわけでは無い
もちろん、常にここに書いたようなパターンをたどるわけではありません。
山が2つあるものもあれば、急成長して急落するものもあります。あるいは、形こそは変わらなくても、山が非常に低い場合もあります。あまり売れなかった商品などですね。
また、プロダクト・ライフサイクルの長さは、製品によって大きく異なることもあります。数十年をかけた長いものもあれば、2年とか3年で1つのサイクルが終わってしまう場合もあるのです。
自然科学の理論では無いので、完璧に予知できるとうわけではありません。まあそれでも、何も判断材料が無いのに比べれば、はるかに役に立つものであるのは確かでしょう。
どんなふうに利用ができるのか?
プロダクト・ライフサイクルという考え方は、どんなふうに利用できるのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
生産計画に利用できる
まず、一つ目の利用法として、製品の生産計画に利用が可能です。
高いペースで成長を続けていた製品も、やがては成熟期をむかえます。ということは、成熟期に入るタイミングの予想が付けば、生産計画も調整ができるわけです。そのことを知らずに増産を続けてしまえば、在庫を抱えてしまうことになるでしょう。
成熟期に入る正確なタイミングを判断するのは簡単ではないかもしれません。それでも、全く情報が無いケースと比べると、はるかにマシですよね。
次の製品の開発のタイミングを知ることができる
プロダクト・ライフサイクルのもう一つの使い方が、次の製品の開発のタイミングをはかるのに便利だと言う点でしょう。
例えばヒットした製品でも、いずれは衰退期を迎えます。そのヒット商品が会社の主力商品だった場合、会社の業績に大きく影響する問題ですよね。そうすると、次の製品を開発しないといけないわけです。
ただ、衰退期に入ってから次の製品を開発しても遅すぎます。プロダクト・ライフサイクルにあてはめて考え、事前に新製品の開発をしないといけないのです。
こうした使い方もできるわけです。
必ずしもうまく行くとは限らない
このようにプロダクト・ライフサイクルは、上手に使えれば非常に役に立つ知識だと言えるでしょう。しかし、実際に使いこなすのはなかなか難しいようです。大企業ですれら、上手に使いこなせていない例をよく見ます。
中国でのスマホの販売を見誤った日本メーカー
一つ目の例は、中国でのスマホの販売台数を見誤った日本メーカーの例です。
シャープの2014年度の最終損益が、赤字になる見込みという発表をしました。その最大の理由は、中国のスマホ需要の落ち込みなのだとか。スマートフォン用の液晶パネルを作っていたシャープは、その影響を受けることになったようです。1
中国のスマホの普及率は、既に95%にまで達しているようです。プロダクト・ライフサイクルの考え方を使えば、成熟期に入っているとみるべきでしょう。そうであれば、液晶の生産は控えるべきですよね。
ただ、シャープ程の会社が、プロダクト・ライフサイクルの考え方を知らないはずはありません。スマホの普及率だって認識していたはずです。それなのに読み誤ってしまったのです。何か違う事情があったのでしょうね。
まあなんにしても、知識としては知っていても、使いこなせない例があるということです。しかも、一流の企業でもそういうことがあるのです。
新しい分野が見つけられないサムスン
ところで、スマホと言う商品は、もう既に成熟期に入った製品と考えていいはずです。もちろん世界的に見れば、状況は国ごとによって違うのだとは思いますけどね。多くの国では、成熟期に入っているという事です。
そうであれば、スマホへの依存度が高い大手の電機メーカーは、スマホに替わる商品の開発が必要なはずです。
でも、なかなかそういった商品を見つけるのは難しいようです。サムスン電子をみていると、次の商品を探すのに、特に苦しんでいるように見えます。
元々サムスンは、先を行っている会社をキャッチアップする形で成長してきた会社です。キャッチアップだけならまだしも、他社の商品をパクっているという悪評すらあります。
実際、アップルから世界中で裁判を起こされていますね。裁判自体は勝ったり負けたりと言う感じのようですが、サムスンが負けるケースも確かにありますし、そういうケースが少ないわけではありません。
そんな会社ですから、新しい分野を見つけるのは苦手なのかもしれません。まあ、なんにしろ、スマホの次は見つけられていないようですね。
スマホが成熟期に入っているということは、もうずいぶん前から言われています。サムスン電子だって、そんなことくらいは重々承知なのでしょう。
でも、分かっていたからと言って、新しい製品を作るのは簡単では無いわけです。プロダクト・ライフサイクルの知識があっても、対処のしようがない状態なわけですね。
このように、プロダクト・ライフサイクルはとても役立つ知識ですが、使いこなすのは意外と難しい知識なのかもしれません。
- 減速し始めた中国スマホ需要 大火傷を負う電機の前途多難
ダイヤモンド・オンライン 2015年2月9日 [↩]
スポンサードリンク
スポンサードリンク