希望小売価格や参考価格は価格維持に役立つ

商品を製造するメーカーや輸入代理店は、希望小売価格や参考価格と呼ばれる価格をつけることが多いです。いわゆる定価というヤツですね。

商品を販売する小売店は、この希望小売価格や参考価格を考慮して、販売価格を設定します。一般的には希望小売価格や参考価格よりも少し低めのところで設定されることが多いようです。

ただ、流通コストがかかるような場合は、希望小売価格や参考価格よりも高い値段で売られる事もあります。山の上のなどで自動販売機の飲み物が、150円くらいの値段で売られているのを見たことがある人は多いでしょう。

メーカーや輸入代理店にとって、希望小売価格や参考価格はどんな意味がある?

ところで、この希望小売価格や参考価格というのは、メーカーや輸入代理店にとってはどんな意味があるのでしょうか。小売店なり卸なりに売ってしまえば、その後いくらで売られようと、メーカーや輸入代理店には関係ない気もしますよね。

希望小売価格や参考価格を設定するのには、いくつか理由がありそうです。

カタログなどに載せるのに便利

例えば、メーカーがカタログなどに自社製品を載せる場合に、希望小売価格や参考価格があった方が便利ですよね。カタログに商品情報を載せても、それの価格が分からないとなると、情報としてはかなり足りない感じがします。

類似の商品のAとBがあって、Aの方が性能的に上位に位置づけられる商品だったとします。この場合、カタログを見る人は、AとBでどの程度価格が違うかを知りたいはずです。でも、その情報が得られないとしたら、かなりモヤモヤした気分になるでしょう。

ですから、メーカー主導で希望小売価格や参考価格をつけるわけです。そうすればカタログを見る人は、性能と価格のバランスを考慮して考えることができるわけですね。

ブランド価値の維持に使える

希望小売価格や参考価格をつけるもう一つの理由が、ブランド価値を維持するためです。もっと言うと、小売店にあまり安い値段を付けさせないために、いわゆる定価をつけるのです。

他社の類似商品と比べて販売価格があまりに安いと、物自体が悪いという印象を与えかねないですよね。つまり、ブランド価値が下がる可能性があるのです。

しかし、希望小売価格や参考価格が付いていると、そこから大幅に値下げをして販売するというのは難しくなるという傾向があるようです。つまり希望小売価格や参考価格をつけることで、他社の類似商品と比べて極端に安い値段で売られる可能性が小さくなるのです。

こうすることで、ブランド価値をある程度維持できるわけです。

定価が付いていると安売りがされにくい理由

ところで、希望小売価格や参考価格などのいわゆる定価が付いていると、安売りされにくくなるのはなぜなのでしょうか。実は、希望小売価格などを最初に目にすると、販売価格を決める際に強い影響を受けるようです。最初に目にした価格から、売値を大きく下げることはし辛くなるのです。

小売店が販売価格を決めるときに、最初に希望小売価格を見たとします。そうすると、実際の販売価格を決める際には、希望小売価格から何割下げようかとか、いくら下げようかという事を考えるはずです。

つまり、販売価格を決める段階で、希望小売価格に縛られた状態になるのです。影響を受けてしまうわけですね。

こうした、最初に目にした価格に影響されてしまう事をアンカリングと言います。行動経済学の用語です。

本来だったら、希望小売価格なんて無視して、自分で売りたい価格を決めれば良いはずなんですよね。仕入れ価格やら店舗の運営コストやらを考慮すれば、希望小売価格なんて関係なく価格は決まってくるはずです。でも実際には、なかなかそうするのは難しいようなのです。

仮に、希望小売価格から5割引の価格で売っても採算が取れるとしても、人間の心理としてはなかなかその値段をつけるのは難しいようです。それよりも、希望小売価格よりもちょっと下げたくらいの価格で販売しようと思うわけですね。このように考えてくれれば、ブランド価値を維持する装置としての希望小売価格や参考価格が意味を持つわけです。

ディスカウントショップには通用しない

ただ、こうした方法も、いわゆるディスカウントショップでの価格設定では通用しないようです。ディスカウントショップは薄利多売が基本ですから、必要なコストに少し利益を乗せたような価格を設定してくるでしょう。つまり定価は、あまり意味を成さないのです。

それどころか、安売りである事をアピールするために、「希望小売価格から5割引」のような使われ方をする事も多いです。こうなってしまうと、希望小売価格や参考価格は、小売店の安売りのアピール材料として使われるだけです。ブランド価値の維持という意味で言うと、逆効果になってしまうわけですね。

酒などのディスカウントショップや家電量販店の登場で、こうしたことが起こるようになったので、最近はいわゆる定価を設けない商品も増えてきました。オープン価格というヤツですね。

特に、値崩れが激しい商品などは、オープン価格で販売されているものも多いようです。例えばパソコンなどは、オープン価格のところもが多いようですね。

最近は以前ほどの値崩れはありませんが、それでも半年も経つと、当初の価格設定よりはかなり安くなっています。安売りされてしまい、ブランドイメージの維持も難しくなるわけです。それだったら、最初から、オープン価格にしたほうがメリットがあるでしょう。

ということで、メーカーや輸入代理店にとって希望小売価格や参考価格は、諸刃の剣という事も言えそうです。

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