あなたは勤め先の会社から、今後5年間の給与(年収)について、次のような2つの提案を受けたとします。あなたなら、どちらを選びますか?
【提案A】
- 1年目:800万円
- 2年目:750万円
- 3年目:700万円
- 4年目:650万円
- 5年目:600万円
【提案B】
- 1年目:600万円
- 2年目:650万円
- 3年目:700万円
- 4年目:750万円
- 5年目:800万円
この2つの提案の場合、「提案B」の方が好まれるのだそうです。人間というのは、物事が上り調子になることを好む傾向があるからなのだとか。このことを、行動経済学では、上昇選好と言うそうです。昇っていくことを好んで選ぶという事ですね。
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本当にそうなのか?
上のような説明は、ある行動経済学の本に載っていたものです。数字などは弄っていますけどね。でも率直に言って、上昇選好を説明するのに上のような例は不適切なような気がするのです。
例えばあなたの能力が他社でも認められていて、年収700万円台の年収が期待できる企業への転職が可能だったとします。そんな場合は、「提案A」を受け入れて、2年とか3年後に転職する事を考えても不思議では無いですよね。
もう一つ大きく気になるのが、6年目の給与です。5年目の給与が600万円の場合よりも、5年目の給与が800万円の方が、6年目の給与が高そうですよね。となると、純粋に5年間だけの給与の話ではなくなってしまうのです。
こうなると、いわゆるアンカリングの問題になってくるのです。(参考:https://www.kjnjgn.com/375)本来の上昇選好とは話が変わってしまうわけですね。
上昇選好という心の傾向自体は正しいと認めるとしても、設問にちょっと問題がありそうな気がします。他に影響を受けそうな点が色々と想像できてしまいますから。
合理的に考えると「提案A」を選ぶべき
ちなみに、6年目以降の事を無視して転職も考えないとすると、提案Aを選ぶ方が明らかに合理的です。なぜかというと、現在の800万円の方が5年後の800万円よりも価値があるからです。
現在の800万円の方が価値があると考えられるのは、物価が上昇するからです。現在800万円で売られているものは、常識的には、5年後には800万円で買うことができないでしょう。
まあ日本の場合、デフレ傾向が続いた時期がありましたから、ちょっと納得しづらいという人もいるかもしれません。デフレ傾向だったら、先に現金を貰った方が得ですからね。
そういう方には、利息が付く分だけ現在の800万円の方が価値があるという言い方でも良いのかもしれません。年に0.1%金利がつけば、単利で計算しても、5年で4万円になりますからね。意外と大きな差が出ます。
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