東京電力が会計検査院から怒られていたのだそうです。その理由は、節約するためにWindows XP上で動く機器を使い続けたためだといいます。1
ご存知の通り、XPのサポートはとっくに切れています。記事によると「平成26年4月に、サポートが終了された」らしいです。つまり、1年程度はサポート切れの状態で使い続けているわけです。
会計検査院がセキュリティに関して言及するというのも変な話だとは思います。セキュリティに関して厳しいはずの電力会社が、こんなことを言われては確かにダメですよね。
何を考えているのでしょうか。
ちなみに、会計検査院に怒られてから心を入れ替え、いまではOSは切り替わっているそうです。切り替えが終わったのはつい最近のようですけど。
節約できる額はわずか
XPへの移行を遅らせたと聞いてまず思ったのが、コストの問題です。移行のコストがかかりすぎるために対応が遅れたというケースは、他の会社でもありそうですよね。
OSを新しく買うだけなら、それほど大きなコストはかからないでしょう。ただ、XP上で使っている専用ソフトか何かを別のOSに移行しようと思うと、開発にお金がかかる可能性があります。「そんな理由かなあ」と思ったわけです。
しかし実際には、そんなことは全く無かったようです。というのも、記事にOSを変えないことで「36億円を削減しようとしていた」という記述が記事にあったからです。
この額から想像するに、単にOSの移行だけの問題だったようです。あるいは、小規模なシステム開発くらいで済んだようです。大規模なソフトウェアの対応をしたら、こんな額では済まないでしょうから。
36億円は大きな額に思えるかも知れませんが、東電規模の会社にとってはびっくりするほどのコストではありません。セキュリティを犠牲にして小銭の節約を取ったという印象は、かなり強く感じます。
セキュリティに関心の低い電力会社は怖いですよね
率直に言って、セキュリティへの関心が低い電力会社って、かなり怖い存在ですよね。東日本大震災で経験したことを忘れてしまったのでしょうか。
ネットワーク関連はサイバーテロの標的にもなり易いはずです。電力会社のお偉いさんが、理解していないはずは無いと思うのですけど。どういう判断で更新しないとなったのでしょうか。
ちなみに、東電の言い分は次のようなものだとか。
東電ではこれまでから、「電力供給についての基幹設備のシステムは外部のネットワークから切り離されているため、影響はない」と説明していた
大手企業がOSの更新をしない言い訳の第1位がこれでしょうね。外部のネットワークから切り離されているから、OSの更新は不要っていう理屈です。
確かに、外部ネットワークと遮断されていれば、リスクが小さいという理屈は分かりますけどね。でも、それでOSの更新をしなくても良いと言い切れるのかというのがポイントなのでしょう。
例えばネットワークを管理しているコンピュータに、外部記憶媒体のスロットが付いていたりすると、そこからウィルスが入ってくる可能性はあります。そういう部分までチェックしているのかなあ。
あるいは、PCの部分はOSの切り替えが済んでいて、機器に入っているOSがXPだと言いたいのでしょうか。それなら、東電の言い分も、あるていど理にかなっています。2
このあたりは、実物を見ないと何とも言えませんけど。
もう一つ気になるのが、あくまで「電力供給についての基幹設備のシステムは外部のネットワークから切り離されている」なんですよね。ということは、それ以外のPCはどうなのかというのも気になるところです。
ネットワーク接続された業務用のPCから情報漏えいは無いのでしょうか。それとも、さすがにPCに関しては、OSのバージョンアップはされているのでしょうか。
まあ、機器のOSだけだったとしても、セキュリティを軽視する姿勢はいただけませんけどね。リスク管理が重要な企業としては、やっぱり心配です。ただ、せっかく記事にしたのだから、記者ももう少し突っ込んで調べて欲しかったです。
- 東電無謀「サポート切れOS更新しない」節約、会計検査院が異例の「金使え」
産経新聞 2015年4月21日 [↩] - 疑問点:どこに入っているOSなのだろう?
ちなみに、記事を読んでいてちょっと分からなかったのが、XPをどこで使っているかです。
OSと聞くと、当然パソコンに入っているものだと思いがちです。しかし、実際にはPCだけではなく、様々な機器のコントロール用にOSが入っているケースもあります。
XPの場合は、「PC用」と「組み込み用」というのがあるのだそうです。組み込み用というのは、機器を動かすのに使う目的のOSですね。ちなみに、「組み込み用」のXPはまだサポートが切れていないので、問題は無いはずです。
ただ、機器を動かすために「PC用」を使う場合も多く、今回問題になっているXPがどこで動いているのかというのが断定できません。PCも機器もサポート切れのXPが使われている可能性もありますし、PCはOSの切り替えを済ましていても、機器の方では「PC用」のXPを使用している可能性があるわけです。
記事を読む限り、PC関連もひっくるめて、アップデートが遅れている可能性もあります。あるいはそうではなく、PC関連はアップデート済みで、機器にインストールされているXPが放置されている可能性もあります。
どちらのケースかによって、大分事情は違います。もちろん、XPを放置するのがダメなのは当然ですけどね。
この点に関しては、記事を書いている記者もはっきりとした認識を持っていない気もします。意識があれば調べられることだと思うので、ちゃんと分かっていない可能性もありそうですね。 [↩]
スポンサードリンク
スポンサードリンク