ディズニー映画の「アナと雪の女王」を今更見てみました。その率直な感想ですが、「なぜこの映画がヒットしたのだろう?」でした。
もちろん、そんなに酷い映画だとは思わないのです。客観的に見て、そこそこよくまとまっている映画なのだとは思います。
でも、あんなに爆発的なヒットをするような映画だとは思えなかったのです。個人的な趣味に合わず、ケチを付けたいところも何箇所かあります。
でも、そんな映画でもヒットしたという事実が大事なんですよね。売り方によっては商品の実力以上に売れることがあるわけです。この点は大いに学ぶことがあるでしょう。
ちなみにこの映画は、世界的に評価が高かったようです。ただ、特に人気があったのは日本ではです。日本の映画の記録をいくつか塗り替えているようです。
「それなりに良い映画を、日本で上手に売り出した」というあたりがヒットしたヒントになるのかもしれません。
1年以上経った映画なので、気にせずにネタバレっぽいことを書きます。これから見るという人は、ご注意を。
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日本のタイトルは上手だったと思います
まず、日本で売れた要因ですが、タイトルが良かったと言うのが挙げられるでしょう。
アナと雪野女王のもともとのタイトルは「Frozen」というシンプルなものです。形容詞だと思えば「寒さで凍った」、過去分詞だと思えば「凍らされた」と言うような意味になるのでしょうか。
多分、カタカナで「フローズン」と言うタイトルでは、ここまでヒットはしなかったでしょうね。どこかのお菓子メーカーのアイスみたいな名前ですよね。
少なくとも、「フローズン」というタイトルからは、女王になった姉とその妹アナの物語だとは考えないでしょう。「アナと雪の女王」にしたことで、映画をイメージしやすくすることに成功しました。
日本語版のスタッフが上手くやった部分だと思います。
日本語の吹き替えが良かったらしい
私自身は英語版を見たのでよく分かりませんが、ネットを調べてみると日本語の吹き替えの評判が良いです。映画の内容からして、子供が見ることを前提にした映画だと思われます。日本語版で楽しんだ人が多い野は想像が出来ますね。
これに関しては、判断のしようが無いので、結論は保留します。
ヒロインが2人だと評価が高いのか?
ネットを調べていたら、ダブルヒロインだから評価が高いという意見を見つけました。
(2)異例のダブルヒロイン…ディズニー史上初だという。姉のエルサと妹のアナ。兄弟姉妹だからこそ、ひとすじ縄では行かない人間関係がていねいに描かれる。1
率直に言って、この意見は理解しづらいなあ。普通の家族愛の話だと思うんだけど。
過去にアナを傷つけたエルサが、「アナを愛しているからこそ距離をとらないといけない」と葛藤しているのは、確かに物語の軸の一つでしょう。でも、そんなにヒットにつながるような要因かと言われると、ちょっと「?」と思うのです。
映画の中に子の手のジレンマを持った登場人物がいるのは、珍しいことではありませんから。というか、何か問題を抱えた人を動かすのが映画ですよね。
その意味では、なぜこの点が評価されるのか、理解に苦しむところです。過去のディズニー映画と違うというだけの話でしょうか。
キャラクターと共感できるからヒットした?
キャラクターに共感出来るからヒットしたという意見もあるようです。ある記事から引用してみましょう。
ここまで日本で受け入れらえた理由を「日本人が共感しやすいキャラクターとストーリー」にあるのではないかと廣村さんは話す。
「ディズニー・アニメーション初のWヒロイン、あらゆる世代の人に響く物語、主題歌『Let It Go』など、ヒットの要因は多様にあると思いますが、ひとつ挙げるとするとアナと、雪の女王になっていくエルサのキャラクターに共感できることが、大きな要因ではないかと思います。姉のためなら自己犠牲をも厭わないアナの姿に感動を覚え、また姉のエルサが他人に隠し続けてきた本来の自分の姿を解き放ち、ありのままの自分を受け入れていく姿にカタルシスを覚える。キャラクターが恐れと向き合う姿や、自分より他人を思いやる深い愛情など、思いやりの文化が根付いている日本人の繊細な心の琴線に響いたのではないでしょうか」。2
これに関しても、個人的には、ちょっと同意しづらいです。姉妹の両方に、そこまで感情移入できるとは思えなかったのです。
まず、妹のアナですが、出会ったばかりの王子に一目ぼれしてしまいます。それまでの抑圧された特殊な環境があるからと言って、ちょっと軽率すぎますよね。
というか、それまでの特殊な環境があるからこそ、軽率すぎる行動だと思うのです。抑圧された状態から解放されたら、最初はちょっと慎重になるのでは無いでしょうか。
ケツが軽すぎるという意味での魅力の無さがある上に、行動の不自然さが気になってしまいました。
引用した記事では日本人の琴線に触れる云々ということを言っています。でも、実際はむしろ逆で、日本人の感覚だとちょっと違うと思いました。
姉のエルサはもっと深刻で、感情のコントロールが難しくやりすぎてしまう人という印象を持ちます。落ち着いた風貌とは正反対のキャラクターとしか思えないのです。内気なのに感情のコントロールが出来ない、面倒くさい女という感じですかねえ。
そもそも彼女が暴走してしまうのは、感情のコントロールが下手なのが理由のようです。そして、雪山を登って姉に会いに来た妹に対して、雪のモンスターを作って追い払わせようとします。
こういう行動から、私がエルサに感じたのは狂気でした。
あともう一人、王子の態度が豹変したのも、ちょっと唐突な感じがしました。前半で裏がある人間だと言うのを全く描かずに、突然行動が変わってしまった彼には、かなりの違和感を感じます。「伏線も何も無いのにいきなり事件が起きた違和感」という言い方がぴったり来るのかなあ。
もちろん主人公を裏切るキャラクターがいるのは、良いと思うのですけどね。唐突感がなくなるような描き方をすれば良いのにと思うのです。前半のどこかで、野心家である部分をちょっと匂わすだけで良いのですけどね。
まあ、子供向けの映画なので、ちょっと極端な性格にしていると言う部分はあるのでしょう。でも、冷静に見てしまうと、ちょっと違和感を感じるキャラクターがいたのは事実です。
ちなみに、唯一、オラフは好きでした。
ひねりが効いたストーリーが良かった?
ひねりが効いたストーリーが良かったという意見もあるようです。これも引用してみましょう。
次にどうなるのか予想がつかない“ひねり”が効いたストーリーが多くの人を惹きつけ、誰かと語り合いたくさせているのだと思います。3
ひねりが効いたストーリーという評価に関しては、賛成とも反対とも言いづらいところです。全くひねりが無いとは思わなかったですけど、すごくひねった構成だとも思わなかったのです。
そもそも、あの程度のひねり方なら、それほど珍しい感じもしないんですよね。この点に関しては、言ってしまえば、普通の映画です。ディズニー映画にしてはひねっているという事なのでしょうか。
そもそも1時間40分ほどの短い映画で、歌のパートがかなりあります。つまり、内容的には1時間ドラマです。ストーリーを大きくひねるほどの時間的な余裕は無かったでしょう。
細かい部分では、意外性を出すように工夫しているのは分かりますけどね。まあ、その程度です。
これをヒットの理由と言われてしまうと、ね。
主題歌が良かったからヒットした
主題歌の「Let It Go~ありのままで~」が良かったからヒットしたという意見もあるようです。この意見は多数あるので、何かを引用するのはやめておきます。
実際の主題歌の良し悪しもあるとは思いますが、それをマーケティングに上手に使えた方が大きかったのかもしれないですね。映画のファンが好んで主題歌を歌うというブームを作れたのは大きかったでしょう。口コミは説得力がありますから、メディアを使った宣伝より効果があります。
また、映画劇中ではエルサ役の松たか子が歌ったのに対し、映画の主題化としてはMay Jが歌いました。どちらが良いのかという議論が起こったのも、マーケティングとしては成功でしょうね。
まあ、それに関しての振る舞いが下手だったMay Jは、ずいぶんバッシングもされたみたいですけどね。炎上マーケティングをして得をするタイプでも無さそうなので、単純にメディア対応が下手だったのでしょう。
ちなみに、ネット情報によると、May Jは消えたことになっているようです。確かに、紅白以来その単語を聞いていないような気はします。
あと、これも個人的な意見を言わせて貰うと、英語版の劇中歌の方が好きでした。でも、日本のファンは松たか子の方が良いという人も多いようです。
日本関係者が頑張ったって事か?
こうやって見てみると、そこそこ良い作品がもともとあり、日本の関係者がさらに頑張ったのが大ヒットにつながっている感じがします。
海外でのセールスや、映画賞の受賞などから考えても、もともとそれなりに評価が高い作品だったことは否定できません。でも、それだけでは、ここまでのヒットにはつながらなかったはずです。賞を取っている作品がそれほどヒットしないことなんて、珍しくないですからね。
日本での声優の選択や、タイトルの変更など、売り出し方が上手かったのが大きいですよね。上にも書きましたが、やっぱり、「Frozen」ではここまでヒットしなかったはずです。
これって、商売をする上では、非常に示唆に富んでいる気がします。つまり、そこそこの商品があれば、ネーミングや売り方がよければ大ヒットさせられるという事ですから。
当たり前の話ですが、商品が良いだけで売れるわけでもないと言う点も重要です。
キャラクター可愛い?
最後にちょっと余談ですが、アナと雪の女王の主人公2人って可愛いですか?個人的には、あまり可愛いとは思えないのですけど。ちょっと怖いと感じることすらあります。
確かに、細かい動きや表情が表現できている点は、さすがディズニーなのでしょう。でも、全然可愛くないんですよね。
一瞬の表情などを見れば、かわいらしいと思える部分もあるのです。でも、基本的にはアレな感じのヒロインという印象でした。
私が日本人だから可愛くないと思うのかなあ。それとも、多くの日本人は可愛いと思っているのでしょうか。ちょっと気になります。
- 大ヒット映画「アナと雪の女王」の楽しみ方 アナどころかド本命!
zakzak 2014.04.26 [↩] - 『アナと雪の女王』日本でヒットした背景は「キャラクターと主題歌」への共感
クランクイン 2014年04月20日 [↩] - ディズニーのキーマンが分析。『アナと雪の女王』が愛される理由
ぴあ映画生活 2014/03/28 [↩]
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