簡易宿泊施設って儲かるのか?| 貧困ビジネスは確かに儲かるのかも

先日、川崎市で簡易宿泊所の火災がありました。最終的な犠牲者は、これを書いている時点では確定していないようですが、何人かが亡くなる痛ましい事故でした。

事故の悲惨さも気になるところですが、それよりも気になったのがこの施設には長期滞在者が多かったという事です。実質的には生活保護の受給者がアパート代わりに使っていたということみたいですね。いわゆる貧困ビジネスというヤツみたいです。

ちなみにニュースによると、一泊2,300円という料金です。イメージとしては、カプセルホテルに泊まるのと同程度という感じでしょうか。

これを単純に30倍すると、一ヶ月で6万9000円かかることになります。つまり、独り暮らし用のワンルームから1Kのマンションなら十分に借りられるような値段なのです。

一部屋の広さは3畳ほどということで、共同便所なのでしょう。そう考えると、かなり割高な感じがしますよね。逆に、施設を提供している業者からすると、かなり儲かっているのかもしれません。人もそれなりに入っていたようですし。

そこで、この手の簡易宿泊所がどの程度の売り上げなのか、ざっくりと考えてみることにしましょう。その上で、他の用途で使うよりも有利だったのかも簡単に検証してみようと思います。

延べ545平方メートルに44人程度が居住

まず毎日新聞によると、今回火災にあった吉田屋という施設は延べ545平方メートルが燃えたのだそうです。全焼でしょうから、この面積から建物の広さが想像できそうですね。延べ面積で2階建てという事なので、単純に半分にすると273平方メートルほどの建物の広さという感じでしょうか。ここに44人の宿泊客がいたようです。

もっとも報道を見る限り、どうも宿泊客の管理がいいかげんだったようで、正確な人数はわからないようですけどね。ここは44人が泊まっているとして話をすすめましょう。それほど大きく人数が違うということもないでしょう。

さて、月額6万9000円で、44人が泊まっているとすると、月々の売り上げは約300万円という事になります。年商になおすと3,600万円です。

ちょっとこの金額だけだと、有利なビジネスをしているのか判断し辛いところですね。そこで、この敷地に賃貸アパートを持っていた場合と比較しみましょう。

仮にこの土地にワンルームアパートを建てたとすると、何戸くらいが建つ計算なのかなあ。今回の施設と同じく延べ床面積を545平方メートルとしてみましょう。共有部分があることなどを考えると、専有部分として提供できるのは面積の7割くらいでしょうか。一部屋20平方メートルとすると約19室が確保できそうですね。つまり、収容人数として半分以下になってしまうわけです。

ワンルームアパートとして貸した場合の料金も、大体7万円前後でしょう。もしかしたら、もう少し安いかもしれません。となると、売り上げという意味では3分の1になってしまいます。そう考えると、イメージに反して結構割りの良い商売なんですね。

しかも、生活保護の人たちを対象に商売をしているわけですから、料金の取りっぱぐれはありません。この点は普通のアパート経営よりも大きなメリットと言えそうです。

さらに大きいのが、この施設は1960年代に建てられた古い施設だという点です。普通はこんな古いアパートだと、二束三文でしか貸せないはずです。それにもかかわらず、普通のワンルームアパート以上の料金が取れているのです。これは大きなメリットと言えそうですね。

不動産の賃貸だと思うと、理想的な仕組みなのかもしれません。

マイナス要因もありそうです

さて、ここまでメリットばかりを述べてきましたが、もちろんマイナス要因だってあるでしょう。

例えば、一日あたり2,300円という宿泊料金ですが、一ヶ月で借りると大幅に割り引かれるという話もあります。ネット情報によると、一ヶ月済むと半額になるなんていう話すら飛び交っていました。半額まで行かなくても、大幅な減額があるとすると、金銭的なメリットは、そこまで大きくないですよね。

また、一応宿泊施設なので、共有部分の管理やら清掃やらの作業をする人は必要でしょう。一説によると、朝食は出ていたというような話もあります。この話が本当なら、普通のアパート以上の人件費は考慮しないといけないですよね。

年3,600万円という売り上げは、旅館として考えるとそれほど大きいものではないでしょう。人件費はそれなりにかかりますから、利益という意味では大したことは無いはずです。

今回の施設が、一般的な旅館ほどの人員を雇っていたとは思わないですけどね。それでも、利益の圧迫要因であったのは事実でしょう。所有者が管理者で無いとしたら、常勤の職員が2人とか3人程度はいる感じでしょうか。

ということで、マイナス要因を考慮すると、多少有利な点は減るのかなあという印象です。ただ、それを考慮しても賃貸アパートよりは有利かもしれませんね。やっぱり、古い物件をそのまま利用できているのと、取りっぱぐれが無いのが大きいように思います。金払いが良い客というのは、どんなビジネスでも上客には違いありません。

貧困ビジネスは国や自治体のお金が絡んでくるので、意外と儲けが大きいようです。

今後どうするのでしょうか?

さて、今回燃えてしまった宿泊施設の跡地は、今後どうするのでしょうか。

一部報道では建築基準法違反だったとも言われています。周辺住民の反対がありそうですから、同じような建物を建てるのは難しいでしょう。またあんな大火事を出されたら、たまりませんからね。それにもともと、周囲に歓迎されるような施設でもありませんし。

ちなみにもともとは、日雇い労働者向けの宿泊施設が多かったような地区のようです。ただそういった施設は、少し離れた一部の地域に追いやられているようですね。

現在はあのあたりはどうなっているかというと、それなりに高いマンションが立ち並んでいます。今回火事にあった施設は、再開発に取り残された場所という感じのようです。

そんな場所に今更簡易宿泊所は作り辛いでしょう。駅に近いという意味では好立地のようですし。

でも、敷地自体はそれほど広くないので、あまり高い建物は建てられないのかもしれません。建築基準法の縛りがありますからね。火災があった2軒を使って、一つのマンションが建てられるのなら、それなりの高さに出来るのかなあ。

何にしても、いわく付きの土地という事になるでしょう。ですから、あの跡地を利用するのはなかなかハードルが高そうです。


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