日経新聞のウェブ版に「もう逃げるしかない 中国ビジネス変調(ルポ迫真) 」という記事が載っていました。1
一応有料記事のようなので、細かくは書きませんが、タイトルどおりの内容の記事です。中国から逃げるように撤退する企業があることや、撤退関連ビジネスのことなどについて書かれています。
中国の経済統計は、はっきり言って信用が出来ません。ですから、現状がどんな感じなのか、正確な部分はよく分かりません。それでも、以前に比べれば、確実に悪くなっているのでしょうね。以前は死守すると言っていた年8%の成長も、いつのまにか言わなくなりましたから。つまり、お手盛りの統計でも、そこまでの数字は出せなくなったということでしょう。
成長が無く、人件費も上がり続けている現状を考えると、今後も撤退する企業は少なくないのでしょう。
中国進出を煽ったのって、日経新聞じゃないの?
さて、現状認識はこのあたりにして、本題に入っていきましょう。
今回の記事で、日経新聞は、他人事のように中国から撤退する企業の事を書いています。でもこれって、かなり違和感を感じませんか?
というのも、企業に中国に進出しろと煽ったのは、日経新聞ですよね。自分達で煽っておきながら、他人事のように撤退する企業の事を伝えるわけです。何とも無責任な話だと感じます。
しかも、煽っていた時期には、かなり強い調子で煽っていたんですよね。例えば、「今中国に進出しなければ、日本は世界から取り残されてしまう」とかいった感じで、危機感を煽ったわけです。個々の企業に対しても同様で、中国に進出するのが如何に利益があるのかを書いてきました。
煽るのがマスコミの仕事だとでも思っているのかなあ。
他にも思っている人はいるのね
ちなみに、こんなふうに思っているのは、私だけでは無いようです。全く同じ記事に、同じような反応をしている人もいました。
石平太郎 @liyonyon
日経新聞は最近、「変調中国ビジネス(ルポ迫真)」という連載を始めた。中国経済の大不況や人件費の暴騰などで苦しめられている日本進出企業の苦境をルポしている。しかし数年前までには、「中国ビジネスのバラ色の未来」を吹聴して日本企業の中国進出を煽り立てたのも日経新聞だ。罪悪感はないのか。
この方は、もともと中国出身の大学教授ですね。メディアにも時々登場し、中国関連の著書も多いです。中国問題の専門家から見ても、やっぱり同じように感じるのですね。
もっと細かい部分でもよく煽っている
実は日経新聞は、この手の煽りが大好きです。中国に関するような大きな物だけでなく、企業のシステムのような細かい話でも煽ってきます。例えば、「年功序列型の企業には将来性が無い」とか、「フラット型の組織にしないと競争に敗れる」といった具合です。
この手の小さな煽りは、手を変え品を変え、継続的にやっています。ちなみに、最近の流行の一つはROE でしょうか。2 よく見かける気がします。
ちなみに、個々の企業のシステムに関して日経新聞が煽る場合、アメリカのやり方が最高であるという前提で語られることが多いです。ROE に関しても、元々は投資の指標で、アメリカで取り入れられたものでした。3
ただ、アメリカのやり方が常に優れているわけでもなく、また日本の実情に合わない場合も多いです。アメリカで主流だから日本でも取り入れるべきでは、いくら何でも酷いですよね。
話半分くらいに思っておくのが良いでしょう
とにかく日経新聞に関しては、この手の煽りが多いです。そして、この手の煽りを真に受けると、悪影響の方が大きい事もあります。
まあ日経新聞に限らず、新聞の記事なんて話半分くらいに理解しておくのがかしこいのでしょうね。あくまで、情報源の一つ程度にとどめておくことをおすすめします。
必要以上に信頼しすぎると、損をするのは自分ですからね。口車に乗せられて中国に進出してしまったがために、その後苦労している企業がどれだけあることか。
- もう逃げるしかない 中国ビジネス変調(ルポ迫真)
日経新聞ウェブ版 2015/6/2 8:27 [↩] - ROE というのは、自己資本利益率のことです。「ROE=当期純利益÷自己資本」で定義されます。この定義から分かるように、ROE が大きければ、自己資本に対して効率よく利益を挙げら得ていることになります。つまり、自己資本に対する利益の大小で、企業の経営効率を測ろうという動きがあるわけです。 [↩]
- ただ、ROE に関しては、投資の世界では数十年前から使われている指標です。個人的には、何を今更という感じは否めません。ネタ切れなのかな? [↩]
スポンサードリンク
スポンサードリンク