レーシックの手術件数が、ピーク時の9分の1まで減っているのだそうです。産経新聞が伝えています。
症例(手術)数は12年の2万件から徐々に増加し、20年には45万件となった。しかし、21年から減り始め、26年は5万件で、20年の9分の1だ。1
眼科医にとっては、レーシック手術はドル箱の手術だったはずです。保険適用外だったので、結構高い値段を付けていた眼科医もいたようですね。それでも患者が来ていたのが、たった数年でこんなに減ってしまったのです。
これって、要するに、かつての主力商品が突然売れなくなったということですよね。大病院ならともかく、開業医にとっては死活問題でしょう。
街の開業医というのは、個人事業主でもあります。ちょっと分析してみる価値はありそうですね。
まずは、産経新聞の記事の中で語られている要因分析について、チェックしてみましょう。
不況説
まず最初の分析は、不況が原因であるという説です。
根岸准教授は「20年は手術件数が多いが、実は同年9月のリーマンショック以降に大幅に減っていた。レーシック手術は保険適応でなく、ある程度のお金がかかるだけに、減ったのは景気の影響ではないか」と指摘する。
この意見はさすがに酷いですね。
リーマンショックの影響が大きかったとはいえ、その後の日本は街に失業者があふれるような事態にはなっていませんよね。それなのに、不況が原因で手術件数が激減するはずがありません。
1割とか2割という単位で件数が減ったというのなら、こういう分析も成り立つかもしれません。でも、ピーク時の1割近くにまで減った理由としては、ちょっとありえません。
これは、他の高額商品を見れば分かります。リーマンショックの影響で宝飾品の売り上げが当時の1割にまで減ったという話は聞かないですよね。
いくら経済の専門家でない医学部の先生の分析だからといって、酷すぎます。もちょっと、真面目に考えてください。
安全性を疑問視している説
次に、レーシック手術の安全性を疑問視して、患者が手術をためらっているという説が挙げられています。
レーシックをめぐっては20年7月から21年1月の間に、東京都中央区にある眼科で手術を受けた患者の多数に角膜感染被害が発生。同年2月に同区の保健所が手術を受けた639人中、67人が角膜感染症などとなり、うち2人が入院したと発表した。「レーシック集団感染事件」として知られ、同眼科の元院長が業務上過失傷害罪で禁固2年の判決が確定している。
リーマンショックの時期に激減したという理由としては、経済的な問題よりも安全性の問題の方が大きい気がしますね。上に引用した事件にあるレーシックの件数が落ち込み始めた平成20年の後半というのは、レーシックの安全性の問題が取り上げられ始めた時期と一致します。
何人かの不心得な意思の存在が、レーシックというマーケットを急速に縮小させた可能性はありそうです。まあ、それでも、ピーク時の1割にまで手術件数が減るというのは、ちょっと説明がつきにくいですけどね。理由としてはまだ弱いです。
メガネ人気説とコンタクト進化説
最後に紹介されていたのは、他の視力矯正の手段の影響です。メガネが人気になり、コンタクトの機能が向上したのでレーシック手術が減ったという事が書かれていました。
これに関しては、もはや、本気で書いているのか疑いたくなるレベルです。微々たる影響はあるでしょうが、大幅減を説明できるはずがありません。
大げさなタイトルのわりには
「視力矯正するレーシック手術が激減!その真相を探ってみると…」などという大げさなタイトルを付けているわりには、真相は全く見えてこない記事でした。もうちょっと頑張って欲しいものです。
個人的には、レーシック手術等のは、そもそも一時的なブームではなかったのかと思っています。ブームになっているから、それ程手術の必要性を感じていない人でも手術を受けていたい気がするのでです。
一連の事故やら景気の悪化やらがあり、ブームが去ったので件数が減ったと考えるとしっくりくる感じがすんですよね。当時の手術件数が多すぎたのであって、今の件数が妥当な水準ということですね。
もう一つ要因として大きいのが、レーシック手術を強く希望する人は、既に手術を終えているという可能性です。ピーク時には45万件の手術件数が合ったわけですから、既に数百万件の手術が行われているわけです。
視力が悪い人全員がレーシックの手術を希望しているというわけでもないでしょう。となると、手術を強く希望する人事態が減り、需要が減ってきても不思議ではないわけです。
せっかくなら、経済的な知見を持つ専門家の議論を読んでみたかったですね。多分私の意見に近いものになるとは思いますが、定量的な説得力のある議論が読めるはずです。
- 視力矯正するレーシック手術が激減!その真相を探ってみると…
産経新聞 2016年6月27日 [↩]
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