新聞記事を読むときには間違っている前提で読むべき| 論理の破たんや矛盾があるのは日常茶飯事

比較的長めの新聞記事を読んでいると、一つの記事の中で論理が破綻していたり、矛盾があることも多いです。しかも、かなり初歩的なレベルでの間違いも目立ちます。

酷いことに、間違いが意図的な事もありそうです。記者の中で主張が明確で、その結論にたどり着くためには、多少の矛盾でも目を瞑ってしまうのです。

何にしても、残念なことですが、長めの記事を読むときには、私たちは論理の矛盾に意識を払いながら読む必要があるようです。そうしないと、間違った結論を信じてしまう事にもなりかねません。

一例をご紹介

せっかくですから、論理的に矛盾した記事を一つご紹介します。

カシオの安価な腕時計が「チームカシオ」と呼ばれ、人気になっているという産経新聞の記事です。ただ、人気にはなっていますが、カシオの業績にはほとんど影響しないと説明しています。

どうして業績に関係が無いのかと説明する部分を引用します。

チープカシオにチープシチズンが続き、ちょっとしたムーブメントになりつつある安価な腕時計だが、両社とも「業績にはほとんど影響しない」とみている。腕時計の国内市場は昨年、売上金額ベースで約9002億円と推定されるが、スイス製の機械式腕時計が約7割を占める。理由は、スイス製の商品単価が高価なためで、初心者向けのエントリーモデルでも軽く20万円台。数十万、100万、200万円台がざらにあり、複雑で特殊な機構になれば数千万円も当たり前の世界だ。

スイス製1本で、チープカシオやチープシチズンが何千本、何万本も購入できる計算になるため、いくら人気と言っても太刀打ちできないわけである。そのなかで、セイコーウオッチを含め国内メーカーは、GPS(衛星利用測位システム)からの電波を受信して時刻精度を向上させるなどして高機能にすることで、価格を20万円台まで引き上げ、市場での存在感を高めてきたのだ。1

この部分では、スイスの高級腕時計のシェアが大きいために、安価な時計はほとんど貢献できないという事を言いたいようですね。なんとなく読んでいたら、納得してしまう人もいるかもしれません。

市場シェアとか他社の単価が業績とどう結びつくんだ?

でも、冷静に考えると、この記事の主張は明らかにおかしいのです。どう考えたって筋が通っていません。

というのも、ある商品の企業の業績への影響って、他社のシェアやら他社製品の単価は関係ないですよね。業績というのは、あくまで、自社の中の問題ですから。

仮に市場シェア1%しか占めていない商品でも、例えばその企業の利益の5割を占めていたら、業績に対する影響の大きい商品です。逆にシェア90%だとしても、企業の利益の1%程度の貢献しかない商品だったら、業績への影響はほとんどありませんよね。

商品単価に関しても同様です。単価が安くても利益率が大きいければ、その企業の業績に与える影響は大きい可能性はあります。安くても利益率が大きいのですから、たくさん売ればたくさん儲かります。仮によその1割の値段で売っていたとしても、そんなことは関係はありません。

特に、カシオの安い時計は実際よく売れているわけです。そうなると、他社がどういうふうなスタンスだろうと、業績の話とはまったく結びつきません。

むしろ影響があるとしたら、カシオ全体の売上高や利益に対する貢献がどうかという部分ですよね。単価が安いので、カシオ全体の売り上げの中では影響が少ない商品だというのなら、納得はできるわけです。

間違っている前提で読まないとダメなんだね

こんなこと、常識的に考えれば分かりそうなものなんですけどね。特に経済的な知識を必要とするようなものでもありませんし。

記事を書いた記者も、記事を通した編集も、気づかなかったのでしょうか。不思議です。

自己陶酔しながら、ノリで書いている姿が想像できるのですけど。どうなのでしょう。

比較的長い新聞記事には、この手のノリで書かれた記事が意外と多いです。多少の論理的な矛盾は、勢いで押し切ってしまえという事なのでしょうか。

まあ、読み手としては、注意して読むしかありません。間違っているという前提で読むくらいでちょうどいいのでしょう。

今回の場合は意図的なものではないでしょうが、意図的にこれをやってくる記者もいるようです。そうなると、本当にたちが悪い。注意が必要です。


  1. 「チープカシオ」世界で高評価 宣伝なしで売れる…メーカー側もびっくり
    産経新聞 2016年10月2日 []

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