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ネット情報によると、マンガ雑誌は赤字のものが多いのだそうです。実際にそうなのか、ざっくりと計算してみました。その結果、確かに黒字にするのは難しそうなことが分かりました。
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黒字にするのは最初から不可能?
ネット情報を見ていると、マンガ雑誌はほとんどが赤字のようです。「雑誌によっては原価率400%」というすさまじい記述もみつけました。1
「原価率400%」という記述があったのは、編集や漫画の原作をしている人のブログみたいですね。マンガ雑誌における原価率がどのように計算されているのか正確なところは分かりませんが、どういう基準で計算したとしてもかなり酷い数字であるのは間違いがありません。
ちなみに、このブログが2008年のものですから、近年はさらにひどい数字なのかもしれません。雑誌の部数は当時よりもさらに減っていますから。
マンガ雑誌には広告ツールとかマーケティング・ツールという側面も
ブログの説明を読むと、マンガ雑誌というのは、そもそも最初から雑誌だけで黒字にする気が無いようです。将来発行される単行本で稼ぐことで、雑誌の赤字は取り返せるという考えのようですね。
その意味では、マンガ雑誌というのは、宣伝ツールやマーケティング・ツールとして使われているという言い方もできます。単行本になる前にマンガの知名度を高めておくことで、当然マンガの単行本は売れやすくなりますからね。
そういうツールであれば、必ずしも黒字にする必要はありませんからね。マンガ雑誌が赤字になるのは合理的な選択と言えなくもありません。
もちろん、黒字になるに越したことはないでしょうけど。
実際にどんなものか調べてみましょう
さて、実際にマンガ雑誌というのはどの程度の赤字なのでしょうか。販売価格は定価販売ですし、発行部数は分からなくても印刷部数はある程度正確なものが分かります。そこからざっくりと計算してみましょう。
具体的な事例として、ゲッサンを参考にしてみましょう。これを選ぶ理由は特にありませんが、ページ数のデータなどが比較的簡単に調べることが出来たので紹介することにしました。
とりあえず、週刊少年ジャンプとか週刊少年マガジンを参考にしても仕方がないですからね。部数が多すぎて。このくらいのギリギリやっている感じの雑誌が良いでしょう。
まずゲッサンの印刷部数ですが、7月から9月の平均で、1号あたり36,000部という事です。定価が税込みで550円という事ですね。
ということは、これが全部売れたと仮定すると、小売店での売上高は1,980万円となります。全部売れたと仮定しても、1号あたり2,000万円いかないのです。この時点で、すでに、ちょっと絶望的な数字という感じがありますね。
上で計算した1,980万円は、あくまで印刷部数が全部売れた場合の小売店での売り上げの合計です。実は、このうちの23%程度が小売店の取り分になり、8%程度が取次の取り分になるのだそうです。
ということは、出版社の取り分は全体の69%しかありません。1,980万円の69%ですから、出版社の売り上げという意味では、1,366万円しかないことになります。
原価で一番大きいのが、作家に払う原稿料でしょうか?原稿料はかなり幅があるようで、作家によって数千円から数万円の開きがあるようです。まあ、人気マンガかと新人では開きがあって当然ですよね。
ちなみにゲッサンのページ数ですが、868ページという記述をネットで見つけました。という事は、大雑把に原稿料1ページ1万円として、868万円の原稿料が発生していることになります。
もう、これだけで、出版社の売上の約3分の2を占めてしまいます。具体的な金額を出すと、1,366万円から868万円を引いて498万円と、500万円をわってしまいます。
原価計算に編集部の人件費が入るかどうかは微妙な気がしますが、仮に入れるとすると、人件費を入れた時点で赤字確定でしょう。編集部に10人いるとして一人当たり月100万円の人件費だとすれば、それだけで1,000万円ですから。
この人件費を入れなくても、製本のコストなどを考えるだけで、まあ原価割れは間違いないでしょうけどね。そして人件費を入れると、原価率200%とか300%程度は、確かにありそうな数字と言えそうです。
とりあえず、部数が少な目の漫画雑誌が赤字なのは、間違いなさそうですね。
- マンガ雑誌に「元をとる」という発想はない
たけくまメモ| 編集家・竹熊健太郎の雑感雑記&業務連絡 2008年11月20日 [↩]
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