既に支払ったお金に引きずられて経営や投資の判断を間違わないようにしましょうね| サンクコストに引きずられている人は多そうです

サンクコストという言葉をご存知でしょうか。日本語では「埋没費用」と呼ばれるものです。

サンクコストの「サンク」は英語の「thank」ではありません。沈むという意味の「sink」の過去分詞の「sank」ですね。ですから、日本語では埋没費用という役になるわけです。

定義を確認しておきましょう

さて、このサンクコストというのは具体的にどんなものなのでしょうか。ウィキペディアの定義を引用してみましょう。

事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止によっても戻って来ない投下資金または投下した労力をいう。

この定義から分かるように、すごく簡単に言うと、どうやっても戻ってこないお金のことをサンクコストと言います。

ちょうどいい実例を見つけました

さて、サンクコストの実例を探していた時に、ちょうどいいものを見つけました。中国人経営者の次のような発言です。1

改革開放政策が本格化した1980年代以降、中国に一番投資してきたのが日系企業だった。それなのに、苦労して播いた種がようやく実って、さあ果実を摘み取ろうという時に去ってしまうのだから、もったいないことこの上ない

本当に中国からの撤退がもったいないかどうかは別にして、人間というのは得てしてこういう考え方をしがちなようですね。こういう考え方というのは、既に払ったコストに判断が引きずられることです。

今回の場合は、発言している中国人経営者はコストを払った本人ではありませんが、自分が日本企業の経営陣だと想像したらもったいないという事です。まあ、感覚的には分からなくはありません。

実際、中国から撤退した日本企業の多くは、中国進出に際して多大な費用をかけている可能性があります。仮に撤退してもすべてのお金が戻ってくるわけでは無いでしょう。つまり、多大なサンクコストが発生している可能性があります。それがもったいないという発言につながるわけです。

サンクコストは考えても無駄

人間の心理として、サンクコストが発生しているときには、それを取り戻したいという方向に判断が傾きがちであるようです。このままいくとジリ貧だと思っても、起死回生の可能性があれば、それにかけてしまいたくなるわけです。

例えば、株式投資で予想が外れ、含み損が出ているとします。時価ベースでの損失は、この時点でのサンクコストという事になります。「撤退・縮小・中止によっても戻って来ない投下資金」という定義通りですよね。

投資判断としては、こんな場合は、さっさと損失を確定してしまう方が合理的という事も多いでしょう。しかしここで損失を確定すると、銘柄選定に要した時間が無駄であったと認めることや、損失を確定することになってしまいます。

それを避けるために、損切をできずに塩漬けになるというわけです。こういうパターンで塩漬けにしている投資家は、少なくないはずです。

おそらく中国に進出していた企業の中にも、こういうパターンにハマっているところは少なくないはずです。事業の失敗を認めることになる撤退には、二の足を踏んでしまうわけです。

でも、これって、合理的な判断ではないですよね。過去に投資した戻ってこないお金のことはいったん忘れて、今後どうするかを判断するのが合理的な行動のはずです。

中国に残った方が儲かると思えば、もちろん残ればいいのです。そうでなければ、過去の投資とは関係なく、さっさと撤退するべきでしょう。

最近になって撤退した企業が多いのなら、正しい判断をした可能性も大きいわけです。まあ撤退を決めざるを得ないほど、中国の現状は厳しいという事もあるのでしょうけどね。

コンコルドの誤謬

ちなみに、サンクコストを惜しんで失敗した例では、コンコルドという飛行機の開発の話が有名でしょうか。コンコルドの誤謬(ごびゅう)とかコンコルド効果などと呼ばれている話です。

サンクコストを意識したために、採算割れであると分かりつつもコンコルドの開発が中止できなかったという事例です。ネットで調べれば詳しい説明があるので、興味がある人はチェックしてみてください。

とにかくサンクコストは、大企業ですら判断を間違える要因になりうるものだという認識はしておいて良さそうです。


  1. 経済・財政世界経済中国
    中国リスクに尻込みする日本企業は、大きなチャンスを逃している
    現代ビジネス| 近藤大介の上海レポート 2016/11/29 []

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