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自宅近所を歩いていると、たくさんの美容院があることに気づきます。たくさんある店の例えでよく出てくるのはコンビニですが、美容院はそれ以上でしょう。
でも、これだけ多いとなると、経営も大変ですよね。日本人の数は急には増えません(というか減少し始めている)し、急に客単価が上がるわけでもありませんから。
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過去10年でもっとも美容室が倒産した
2018年は、美容室の倒産が過去10年で最多に迫る勢いなのだとか。12月次第では、10年で最多の倒産ということですね。
過去10年でみると2011年の91件が最多で、2018年は11月末の段階で86件です。確かに順当に行くと、過去最多になりそうです。
2011年というと、菅政権とか野田政権の時代でしょうか。その当時は、確かに、景気が悪かったですね。2008年のリーマンショックの影響もありましたし。その後、倒産件数は減少し、2013年には64件まで減っています。
2011年頃と比べると、現在は景気は良くなっているはずなんですよね。経済ニュースをみても、雇用の統計はいいですし、インフレにはなっていないもののデフレという感じでもありません。
でも、こんな業種もあるのですね。まあ、業界ごとの特殊要因みたいなものがあるのでしょうね。
店舗数が増えすぎたみたいです
さて、この美容室の倒産に関する東京商工リサーチの記事を読むと、かなり意外なことが書かれていました。倒産以上に、美容室の店舗数の増加が凄まじいのです。
比較的かんたんに開業できる業種だけに、安易に開業する人がいるのだろうというのが全体的な感想ですかね。1 でも、顧客が増えるわけではないので、競争は厳しくなると。
それでは、細かく見ていきましょう。
倒産の定義を確認しておこう
それにしても、全国で1年で100件以下しか美容室が倒産しないって、ちょっと変だと思いませんか。単に店を閉めているだけなら、もっと多くてしかるべきです。
というのも、美容室は中小企業か個人経営がおおいですよね。そうであれば、例えば、年齢が高くなったから廃業したと言うようなケースはかなりあるはずなのです。
そこで調べてみたところ、この統計では「負債総額1,000万円以上を対象とする」のだそうです。つまり、年齢が高くなったから美容室を占めるというようなケースは、ほとんど含まれていないと考えて良さそうです。
ある程度の借金を抱えて、行き詰まっている美容室が、年間100件弱あるというイメージですね。
個人企業の倒産が多い
記事を読む限り、小さい企業の倒産が多いようですね。まず、引用してみましょう。
資本金別では、「個人企業」が48件(前年同期比118.1%増、前年同期22件)と倍増し、「個人企業」が全体の過半数(構成比55.8%)を占めた。このほか、「1百万円以上5百万円未満」が21件(前年同期比12.5%減、前年同期24件)、「5百円以上1千万円未満」が9件(同28.5%増、同7件)と続く。「1億円以上」は発生なし(前年ゼロ)だった。
個人企業が48件ということで、昨年の倍以上のペースで倒産しているようです。個人事業というのは、個人事業主ということでしょうか。用語の定義を探しましたが、見つかりませんでした。
ちなみに2017年の倒産件数は、1年間で72件でした。そして今年が11月までに86件です。
ということは、倒産件数が増えた要因は、個人企業の倒産が増えたからと考えて良さそうです。すべての倒産の負債総額の合計は前年と大差がないので、やっぱり、負債の小さい個人企業の倒産が増えたのが件数が増えた要因と言えそうですね。
売上が減って倒産したようです
倒産した原因ですが、わりと単純で、売上が落ちたから倒産したということみたいです。
原因別では、「販売不振」(業績不振)が78件(前年同期比41.8%増、前年同期55件)が最も多かった。全体に占める構成比は90.6%で、同業他社との過当競争を浮き彫りにした
86件中の78件ですから、大体はこのパターンで倒産するということです。
また、経営上の問題として、次のような点も指摘されています。
美容室経営者では、経営上の問題として「客数の減少」と「客単価の低下」を上位に挙げている。
つまり、倒産が多いのは客が減って一人あたりの使う金額が減ったのが原因だということです。まあ、そりゃ、倒産しますよね。
でも、客数の減少って、ちょっと変な話ですよね。日本の人口は減少傾向にあるものの、その減少のペースは非常にゆっくりしたものです。
それなのに、経営に影響が出るほど客数が減るって、どういうことでしょうか。一応記事の中では、次のように説明していました。
特に、「客数の減少」は深刻で、地方を中心に人口減少に加え、年に数回しか利用しない客層が拡大していることが影響している。
率直に言って、これでもまだしっくり来ません。
人口減少は確かに深刻でしょうが、今年1年で急に減ったということでも無いですよね。長期的な傾向です。
ということは、2018年の客数の減少が、倒産の直接の要因とは考えにくいのです。
また、利用回数が減っているというのも、今年1年の減少では無いはずです。これも同じく、2018年の販売不振の原因とはいいづらそうです。
ということは、今年倒産が減った理由は、これでは無いですよね。まあ、過去からのダメージが蓄積して、2018年に倒産ということはあると思いますが。
人口減少と言うよりは過当競争が原因じゃないの
とりあえず、倒産の原因は、むしろ次の点のような気がします。
厚生労働省の「衛生行政報告例」によれば、美容室(美容所)数は2008年度に22万1394施設だったが、2017年度は24万7578施設に達し、この10年で2万6184施設(11.8%)増加した。
人口は全く増えていないのに、施設数は急激に伸びているわけです。1年で12%近く美容室の数が増えています。
それにしても、

店舗の数が10%以上増えたということは、一つの店舗あたりの客数は、今年1年で10%以上減った可能性があるわけです。客数なんてそんな大きな変動はありませんから、当然ですよね。
そりゃ、中小の美容室の中には潰れるところも有るでしょう。
約25万施設あって倒産件数が数十件なら、それほど多くない感じもしますね。おそらく、倒産ではなく、廃業するケースもあるのでしょう。上に書いたように、今回倒産にカウントされたのは、1,000万円以上の負債があるケースに限定されています。
1店舗あたりの客数を考えてみよう
率直に言って、日本国内に25万件もあったら、競争は厳しすぎますよね。大手のコンビニ3社の合計ですら、5万5,564店しか無いそうですから。
美容室はコンビニの5倍も有るわけです。そんなに必要なはずがありません。

仮に美容室を使う日本人が約1億人とすると、1施設あたりの顧客の数は400人ということになります。25万施設ということですから1億を25万で割って400です。
仮にこれらの客が月に1回のペースで来店するとしましょう。客単価が5,000円とすると、1か月の売上は200万円ということになります。客単価が1万円で400万円です。
美容室の場合は、それなりに良い立地のところに出店している印象ですよね。ということは、賃貸料が結構かかります。
そして、当然ですが、人件費もかかります。ですから、1ヶ月あたり200万円から400万円程度の売上だと、結構厳しそうですね。
現実的にはさらに厳しそうです
しかも、今回挙げた美容室の中には、理容店は含まれていないようなのです。いわゆる男性が行く床屋さんですね。
その上、1,000円カットで十分という層も、少なからずいるでしょう。来店の頻度だって、平均すると月1回より低いはずです。女性だと、3か月に1回が平均なんていう話もあります。
こうやって考えると、実際の売上は、更に小さいことになります。200万円台が平均的なところかなあ。もしかしたら、平均は200万円を割り込むかもしれません。
美容師とか理容師は、低賃金だという話はよく聞きます。実際にこうやって売上を計算してみると、給料はそんなに出せないのが分かります。
平均で200万円ということは、中央値でみるともっと下でしょうからね。ギリギリのところで経営している美容室が多いのです。家賃を払って、水道光熱費を払って、スタッフの給料を払うと、ほとんど残らないという感じです。
「簡単に開業できる = 簡単に儲かる」ではない
美容室というのは、基本的にかなり開業がしやすい業種のはずです。規模にもよりますが、数百万円台で開業できるでしょう。
これだったら、働きながらお金を貯めて開業するなんていうことも可能なわけです。実際、そういう人も多いでしょうしね。
しかし、簡単に開業できるのと簡単に儲かるのは、全く別の話だということですね。というか、簡単に開業できるからライバル店も多く、儲かりにくいということも出来ます。
夢を持ってやっているのですから、開業するなとは言いませんけどね。茨の道だと思って進んだ方が良さそうですね。

- 過当競争により「美容室」の倒産が過去10年で最多に迫る勢い
2018/12/10(月) 13:30配信 東京商工リサーチ [↩]
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