自分でビジネスをやっている人だと、今の景気の善し悪しを判断する必要があります。景気の善し悪しの判断で、直感だけに頼るのは危険です。何か客観的な指標があったほうが良いでしょう。そんな時に便利なのが、景気動向指数です。
Contents
景気動向指数の概要
どんな指数? | |
調査・公表 | 内閣府経済社会総合研究所 (統計表一覧:景気動向指数 結果) |
サイクル | 毎月 |
今の景気が良いかどうか、判断できますか?
いま景気が良いか悪いかを聞かれたら、どう応えるでしょうか。おそらく誰もが、自分の実感をもとに応えるでしょう。
例えば、残業が増えたりバイトの時給が上がれば景気が良いと感じます。逆に、仕事がなかなか見つからなければ、景気が悪いと応える可能性が大きいわけです。
でも、それって、自分だけの話ですよね。あるいは、もう少し広くても、自分の身の回り程度の話です。
日本全体の景気の善し悪しってわかります?
それでは、日本全体は景気が良いですかと聞かれたら、どう応えるでしょうか。この問いには、ちょっと困る人が多いはずです。
日本全体の景気の善し悪しを、自分の肌感覚だけで把握するのは意外と難しいものです。全体としては景気が悪いのに、たまたま勤め先の業績が良くて、給料があがるなんて場合もありますからね。
あるいは、日本全体は景気が悪いのに、自分の住んでいる地域だけは景気が良いなんてこともあります。例えば、次のようなケースは、実際に起こりうるでしょう。
日本は全体的に景気が悪い。特に沖縄は景気が悪いようだ。しかし、東海地方だけは、自動車産業が好調で景気が良い。その証拠に、愛知県の有効求人倍率が全国で突出して高い。
国内が不景気で、海外は景気がいいとういようなケースですね。しかも、日本が不景気なのになぜか円高だったりするのです。こういうケースも過去にはありました。
この場合、景気は悪いのです。でも、東海地方に住んでいる人は、景気が悪いと感じていないでしょう。
上のようなケースは、日本政府と日銀の政策の失敗なんですけどね。そのことに文句を言っても始まりません。私たちとしては、現状を正しく認識して、賢く行動するしかありません。
不景気なら不景気なりの行動を取るわけです。そのためには、まず、不景気であることを知らないといけません。
自分の身の回りの人によって景気判断が狂うことも
景気判断は、身の回りの人によって狂うこともあります。
不景気になると敏感に反応するのは、比較的所得が小さい世帯でしょう。もともと使えるお金が少ないので、景気の変化に敏感なのです。
ということは、自分の周りに比較的裕福な人が多ければ、こういう人たちの変化には気づけません。自分の景気に対する体感も、狂ってしまうわけです。
統計を使いましょう
このように、個人の感覚だけだと、景気の判断は不正確になりやすいものです。つまり、すでに不景気なのに、そうであることに気づかない事があるわけですね。
あるいは、その逆のケースもありますね。実は景気が良いのに、そうとは気づかないこともあるのです。
個人の感覚というのは目の届く部分だけの狭い世界だということです。
景気の良し悪しが判断できなくても、一般の人には問題は無いでしょう。でも、個人事業主を含めた経営者にとっては、死活問題になることもあります。
特に影響が出そうなのが、小売をやっている人でしょうか。景気判断を間違えると、仕入れで失敗なんてこともありそうですよね。
景気が良いと思って多めに仕入れたのに、思ったほど売れなかったなんてことも起こります。ちょっと高級な商品を扱っている場合だと、こんなケースも起こりそうですね。
あるいは、景気が悪いと思って仕入れを少なくしたら、思ったより売れるようなこともあります。こういうケースも、ビジネスチャンスを逃したという意味では、失敗ですね。
景気動向指数で判断しましょう
こんな時に便利なのが、景気動向指数です。景気動向指数というのは、次のような指数です。
景気動向指数には、コンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)がある。 CIは構成する指標の動きを合成することで景気変動の大きさやテンポ(量感)を、DIは構成する指標のうち、 改善している指標の割合を算出することで景気の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測定することを主な目的とする。(内閣府サイトより抜粋)
内閣府経済社会総合研究所が毎月発表しています。
景気動向指数には、CIとDIの2つがあります。以前はDIが主に使われていましたが、現在ではDIの方が重要視されているようですね。
ちなみに、景気動向指数は、景気が良いか悪いかを判断する指数ではありません。景気が良くなる方向に向かっているのか、悪くなる方向に向かっているかという、景気の方向を判断する指数です。
具体例を見てみよう
試しに、これを書いている時点での、直近の数字を見てみましょう。令和元(2019)年12月分速報には、CIに関して次のような事が書かれていました。
一致指数は、前月と比較して横ばいとなった。3か月後方移動平均は 1.90 ポイント下降し、3か月連続の下降となった。7か月後方移動平均は 1.05 ポイント下降し、14 か月連続の下降となった。
一致指数って何だ?
まず、一致指数という語は知っておく必要があるでしょう。
景気動向指数のCIにはDIには、「先行指数」「一致指数」「遅行指数」という3つの指数があります。景気に先行して動くのが先行指数、ほぼ一致して動くのが一致指数、遅れて動くのが遅行指数です。
ということは、現在の景気の動向を知りたければ、一致指数を見るのが一番いいことになります。先行指数は、将来の景気の予想用に使うという感じですね。
3か月後方移動平均って何だ?
次に、3か月後方移動平均という語が、分かりづらいでしょうか。
これは、要するに、過去3か月分の平均という意味です。例えば、2019年12月の数値として、10月、11月、12月の平均値です。
当然、11月の数値は、9月、10月、11月の平均ということになります。以下、同様です。
移動平均を採用することによって、グラフをならすことが出来ます。1か月ごとのデータを使うと、変動が大きくなりすぎて、逆に傾向がわかりづらくなるのです。1
ということで、「3か月後方移動平均は 1.90 ポイント下降」というのは、3か月の後方移動平均で見ると、前月と比べて1.90ポイント下落したということですね。
もっと丁寧に言うと、10月、11月、12月の平均は、9月、10月、11月の平均よりも1.9ポイント悪かったということです。で、下落するのは3か月連続であるとも書いてあります。
11月と12月のデータの比較だけで見ると、景気の基調は変わらない用に見えます。しかし、過去3か月でならしたデータで見ると、景気の基調は下落している事がわかります。
景気の動向を知る指数
大事なことなので、もう一度確認しておきましょう。景気動向指数が悪化したということは、いま景気がわるいとうことではありません。
CIはあくまで景気変動の基調を見る指数ですからね。
どう解釈するかというと、3か月後方移動平均でみると、景気が悪い方向に向かいつつあるということです。そして、この傾向が3か月連続続いているということです。2
ということは、大きな傾向としては、悪い方向に向かっているのかもしれないと判断できます。全体として景気が良いか悪いかは別にして、方向性としては悪い方に向かっている可能性があるという感じですね。
今の景気は悪いわけでは無いかもしれません。でも、前月と比べると悪くなっているということですね。
- ちなみに、内閣府のサイトにも、次のような説明がありました。
例えば景気の拡張局面においても、CI一致指数が単月で低下するなど、不規則な動きも含まれていることから、移動平均値をとることにより、ある程度の期間の月々の動きをならしてみることが望ましい。
[↩]
- 例えば、景気がすごく悪い状態からちょっと改善しても、景気は悪いままですよね。前月よりマシというだけです。ただ、こういうときでも景気動向指数は増加する可能性が大きいということです。前月と比べて景気が改善したから増加したというわけです。 [↩]
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